日々大量の本を読む人にとって、本の置き場所や保管方法は常に悩みの種でしょう。なるべく電子書籍で購入しようと思っても、紙の質感が好きな人や、ラインマーカーを引きながら読みたい人にとっては、紙が手放せないものです。
また、紙でも電子でも本を読みたい人は、毎回どちらで買えばいいか迷うことも多いのではないでしょうか。
今回は、本のスキャニングについて解説します。
スキャニングするときの注意点を中心に紹介しますので、読書家な人はぜひ参考にしてみましょう。
まずは、本のスキャニングで得られるメリットを解説します。
スキャニングすることでしか得られないメリットもあるため、まずは目を通してみましょう。
スキャニングによって本の内容を全てデータ化しておけば、保管場所に困ることがなくなります。
オフィススペースを有効活用しやすくなり、ゆったり落ち着いた空間のなかで働きやすくなるでしょう。
空間に余裕が生まれることで得られるメリットは、精神的なものだけではありません。
コンパクトオフィス化しやすく、移転や引っ越しの際、今よりも床面積の小さなオフィスでも事足りる可能性が出てきます。
オフィス賃料を抑え、ランニングコストを安くするための施策としても効果的でしょう。
将来的にテレワークの導入率を上げる予定があれば、バーチャルオフィスやコワーキングスペースも選択肢のひとつに入れることが可能です。
また、地震などの災害発生時に本の下敷きになることを防いだり、本を保管するための倉庫費を抑えたりすることも期待できます。
断捨離の一環としてスキャニングすれば、意外と紙状態の本がなくてもよいことに気がつくかもしれません。
本をスキャニングしておけば、出先での閲覧がしやすくなります。
通勤中・出張中・外回り中でも読書しやすく、いつでもどこでも好きな本にアクセスできるようになるでしょう。
パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットと同期しておけば、更に使い勝手がよくなります。
また、あらかじめ本の内容をダウンロードしておけば、Wi-Fi環境のない場所でも利用できます。
PDF化しておくなどの方法もありますので、併せて検討してみるとよいでしょう。
長期旅行に出るときのお供として活用する方法もあります。
いわゆる「本の虫」にこそ、スキャニングがマッチすると分かります。
本を購入するに当たり、どうしてもネックとなるのが保管場所の問題です。
デスク周りが本だらけになってごちゃごちゃしたり、本当に必要な本がすぐ取り出せなかったり、困ることも多いでしょう。
かといって電子書籍は読みづらいという人も多く、どうしても紙での本にこだわりたいこともあります。
そのため、大量の本を買うことが徐々にストレスになってしまい、読書欲と釣り合わなくなってしまうことも少なくありません。
本のスキャニングができれば、このようなストレスを大幅に払拭できます。
欲しい本を欲しいだけ買えるため、買う本を厳選して知識との出会いの阻む必要もなくなりそうですね。
OCRスキャニングをおこなえば、本の内容を検索し、情報を参照できます。
特定の単語やキーワードで検索したり、登場人物の名前で検索したりして該当書籍をピックアップすることができるでしょう。
特にノウハウ指南が多いビジネス書においては、興味のある単語に紐づいて本を選べるのは大きな利点となります。
また、タイトル・著者・執筆年・出版社なども登録しておけば、内容以外の部分にも検索をかけられます。
「あの本をもう一度読み直したい」と思ったときにも、1冊ずつ本棚から探す必要がなくなるのです。
本のスキャニングにはさまざまなメリットがありますが、一方で注意すべき項目も複数あります。
ここでは注意点をひとつずつ解説しますので、スキャニング前に目を通しておきましょう。
本を始めとする出版物の多くには、著作権が与えられています。
著作権は知的財産権の一種であり、著作物の公正な利用と著作者の保護・調和を図るために設定されています。
著作物を作った人が著作権を持っているため、お金を出して購入したからといってどんな扱いでも許されるわけではないことを知っておきましょう。
なお、著作権の原則的保護期間は、本の内容が執筆されてから著作者が亡くなって70年経過するまでです。
2018年に保護期間が50年から70年に延長され、より長い期間適用されることとなりました。
一部の古典小説・随筆・紀行文を除き、基本的には著作権が有効な書籍ばかりだと捉えておくとよいでしょう。
特にビジネス書は最新の業界知識や時代に合ったノウハウを授ける目的で執筆されていることが多く、著作者が存命であることが多いです。
また、万が一亡くなっていたとしても、70年経過していることはないでしょう。
そのため、著作権に関する知識が必須となるのです。
本のスキャニングに当たり、「自炊代行」と呼ばれるサービスを知る機会もあるでしょう。
自炊代行とは、依頼主から本を受け取ってデータ化してくれる、スキャニング代行サービスです。
非常に便利なサービスではありますが、違法としてみなされることもあるため注意しておきましょう。
なぜなら、自炊代行が著作権法30条1項に抵触するとみなされた判決があるからです。
「個人的にまたは家庭内その他これらの準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」場合、もしくは「その使用する者が複製する」場合にのみ著作物の複製が許可されているため、第三者である自炊代行業者に外注してしまうと、この除外範囲から漏れてしまうのです。
実際に、複数の小説家が連名で自炊代行業者を訴えた裁判が2011年におこなわれており、自炊代行業者に賠償金の支払いが命じられました。
依頼主である自分に直接賠償金が請求されることはありませんが、トラブルに巻き込まれないためにも、回避しておくことをおすすめします。
前述の通り、著作権法30条1項では「個人的にまたは家庭内その他これらの準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする」場合にのみ、著作物の複製が認められています。
つまり、自分のためだけに使う複製でないと、違法性に問われる可能性があることを知っておきましょう。
そのため、スキャニングしたデータを複数名に共有し、活用することはNGです。
こちらは自炊代行業者などを挟まず自発的におこなう違反行為であるため、最悪の場合10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が直接科せられる場合があります。
当然、複製だと知りながら利用した相手も罪に問われる可能性があり、両者の関係性にまでヒビが入ることも少なくありません。
予想以上に大きな打撃となることを考え、あくまでも私的利用の範囲内での利用にのみ留めておきましょう。
スキャニングしたデータは、インターネット上で送信してはいけません。
著作物には、著作権以外にも公衆送信権が与えられており、著作物を公衆向けに送信する権利が限られているのです。
つまり、誰もが見れる状態にあるクラウドサービス上にアップロードしたり、SNS・YouTubeなどの動画サイト・ブログ・掲示板・質問サイトになどに掲載したりすることはできないのです。
私的利用の範囲でおこなう場合、自分以外の誰も閲覧できないクラウド上にアップする必要があります。
間違っても公開範囲を広げたり、家族・職場・友人の共有しているアカウント上に投稿したりしないよう注意しましょう。
万が一違反した場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科せられます。
データ化が当たり前になった時代だからこそ、法律に関する知識も身につけておきましょう。
本をスキャニングするにあたり、表紙・裏表紙を外し、ページごとに断裁する可能性が高いです。
断裁することでスキャニングのスピードを上げ、短時間で効率よくデータ化できるため、自炊代行を始めとするおおくの業者では断裁スキャニングを採用しているのです。
当然、断裁された本は元通りにはなりません。
1枚ずつバラバラにされたうえで、原則破棄となることを承知しておきましょう。
業者によっては再度製本して返却してくれることもありますが、ほとんど場合別料金です。
また、完璧に元通りの姿になることはないため、絶版本など再入手できない本をスキャニングするときには十分注意しておきましょう。
スキャニング時にはスキャナーを使うため、本の痛みがそのまま影として写ることが多いです。
そのため、日焼けをしている本・雨や飲み物で水濡れしてしまった本・汚れのあるページなどは、読みづらくなる可能性があります。
電子書籍のように綺麗な状態でデータ化できるとは限らないため、十分検討しておく必要がありそうです。
特に、発行年月日の古い本や、長年読み続けて痛みのある本の場合、クオリティはあまり重視しない方がよいでしょう。
スキャニング後に本文検索して特定のキーワードをピックアップしたい場合、専用のスキャナーが必要です。
OCRスキャナーという文字認識機能つきスキャナーを用意し、通常の自動スキャンより時間をかけて読み取るため、あらかじめ知っておきましょう。
当然ながら、通常のスキャナーと同じ性能で比較した場合、OCRスキャナーの方が高額です。
また、100%文字を認識してくれるとは限らず、抜け・漏れや読み取りミスがある可能性もあります。
あくまでもおよその情報を登録しておきたいときや、プレゼンテーション資料などビジネス向け書類の読み取りに向いているものであることを理解し、活用していくのがおすすめです。
自炊代行への外注費用、本の断裁費用、再製本費用、OCRスキャナー購入費用など、本のスキャニングには意外とお金がかかります。
スキャニングするボリュームによっては、予想以上にコストがかかってしまうかもしれません。
青天井で想定せず、あらかじめおおよその予算だけでも立てておくのがよいでしょう。
予算感が分からない場合はインターネット上の情報や自炊代行業者の料金表を参考に、自分なりの金額相場をイメージしておくことが大切です。
万が一大幅に超えそうなことが分かったとき、それでも決行するか、スキャニングを諦めるか、スキャニングするボリュームを減らすか、対処法も考えておくことをおすすめします。
最後に、安全に本をスキャニングする方法を紹介します。
著作権や公衆送信権に抵触しないよう配慮しながら、進めていきましょう。
自炊代行を利用する場合、著作権のない本のみ依頼しましょう。
著作者が既に亡くなっていること、亡くなってから70年が経過していることをひとつの基準とし、手持ちの本と見比べてみることが大切です。
著作家のある本をスキャニングしたい場合は、自分で実行する他ありません。
断裁機などもなく手間に感じられるかもしれませんが、やむを得ない作業だと割り切るしかないでしょう。
自分でスキャニングする場合、スキャニング支援をしているビジネスセンターを活用するのがおすすめです。
自炊代行をはじめとする業者に著作物のスキャニングを依頼すると違法ですが、あくまでも自分の手でスキャニングすることが目的であるビジネスセンターは、違法には当たりません。
業務用のスキャナー、OCRスキャナー、断裁機などが設置されていることが多いため、機材を自前で買う必要がないことがメリットです。
ただし、コストは1ページ単位で加算されるため、こまめに額を確認しながら精算していくことがポイントです。
本のスキャニングを検討している場合、著作権への配慮は必ず忘れないようにしましょう。
また、自炊代行の多くは著作権法に抵触する可能性があり、トラブルに巻き込まれないためにも事前のリサーチが欠かせません。
著作権のない資料・書類であれば問題なくスキャニングの外注ができるため、手元にそのような書類があれば、検討してみることをおすすめします!