スキャニングは、手元にある書類を削減する「ペーパレス化」にも貢献しています。煩わしい紙書類の管理から解放される手法でもあり、近年特に注目が集まっています。
今回は、スキャニングによるペーパレス化がどんな効果をもたらすのか解説します。
ペーパレス化に注目が集まっている背景や、反対にどんなデメリットがあるのかについても触れ名ながら紹介しますので、より詳しく理解したい方は参考にしてみてください。
まずは、スキャニングによるペーパレス化が注目されている理由を紹介します。
時代のトレンドがペーパレス化に傾いている理由を知ることで、会社単位ではなく世界単位でのメリットを実感しやすくなるでしょう。
2019年4月から働き方改革が施行され、テレワーク・リモートワーク・モバイルワーク・在宅勤務など、多種多様な働き方が認められるようになりました。新型コロナウイルスの流行に伴ってテレワークを導入する企業が一気に増え、今後も加速的に広まっていくことが予想されています。
こうした働き方の変化に伴い、紙での書類管理の限界が知れ渡るようになりました。
オフィスに行かないと情報を参照できない紙媒体で管理するより、データ化してデジタル形式にした方が、働きやすくなるのです。
また、スマートフォンやタブレットの普及により、いつでもどこでもデータ化された情報にアクセスできるようになったことも、利便性向上に役立っているでしょう。
こうした時代背景から、ペーパレス化のニーズが高まっていると分かります。
紙の大量使用は、自然破壊につながるとして懸念されるようになりました。リサイクル技術が年々上がり、「育林」による森林環境保全がおこなわれるようになったとはいえ、必要以上に紙資源を使うことに対する不安の声は強くなっています。
そのため、誰もが知る大企業や環境保全に関心の高い企業からペーパレス化にとりくみ、必要なシーン以外での紙利用を避けるようになってきています。CSRやSDGsの観点からも注目度が上がり、なかには取り組みがテレビ・新聞などのマスメディアにピックアップされることも少なくありません。
自社だけのメリットだけでなく、社会的なメリットにも目を向けながら、ペーパレス化に取り組んでいる会社があると分かりますね。
情報化社会が進行するにつれ、セキュリティ対策に対する関心も年々高まってきています。高いセキュリティレベルを担保するクラウドサービスや、完全クローズドな環境で作業できる機密性の高い環境も話題になり、外部からの不正アクセスを阻止する動きが盛んになってきました。
こうした技術革新により、安心して機密情報をデータ化できるようになっています。
もちろん十分なセキュリティ対策や社員教育が必要なことは変わりませんが、きちんと対策できていれば、安心して使うことができるでしょう。
データ化することによる情報漏洩リスクより、紙書類の紛失・破損・汚損・盗難リスクの方が高いと感じる企業も多くなり、さまざまなシーンでペーパレス化がおこなわれています。
実は、企業ごとの努力だけでなく、政府主導でペーパレス化がおこなわれていることをご存知でしょうか。
ペーパレス推進のための法整備が着々と進み、1998年には国税関係の帳票・帳簿の電子保存を認める「電子帳簿保存法」が制定されました。その後、2004年には保管が義務づけられている商法・税法上の書類のデータ化を認める「e-文書法」が制定されるなど、世の中は少しずつ変わりつつあります。
前述の働き方改革の重要政策のひとつに「ペーパレス化」が含まれるなど、法律以外の部分でもペーパレス化の文字が見られるようになりました。
スキャニングによるペーパレス化は、今まさに追い風を受けていると言えるでしょう。
ここでは、スキャニングによるペーパレス化による効果を紹介します。
実際にどのようなメリットが受けられるか確認し、ペーパレス化の狙いを探っていきましょう。
スキャニングをして情報をデータ化することで、時間・場所を選ばず社内共有できるようになります。書類を閲覧するためにオフィスに出向く必要がなくなり、いつでもどこでも社員が働ける環境づくりができるでしょう。
実際に、下記のような働き方をする社員がいる企業では、ペーパレス化のメリットが高くなります。
・在宅勤務をしている社員
・コワーキングスペースやレンタルオフィスで仕事をする社員
・客先常駐などオフィスへの出勤機会が少ない社員
・外回りしていることの多い営業社員
・海外赴任している社員
・複数拠点を渡り歩く管理職社員
・リゾートワーク等で地方・海外で仕事をする社員
物理的な距離感への対策が難しくても、書類の管理法を見直すことで多様な働き方はできるようになります。現状上記のような社員がいなくても、今後社内体制を変えていこうかと検討している場合は、同時にペーパレス化も進めてみるとよいでしょう。
書類をデータ化してペーパレスにすることで、書類そのものの作成・管理コストを削減できます。例えば、下記のようなコストが削減できるでしょう。
・複合機利用料
・複合機にかかる電気代
・インク代
・紙代
・書類管理用の倉庫費
・多拠点間での書類郵送費
また、これまで収入印紙が必要であった一部書類もペーパレス化できるようになり、印紙税軽減による節税効果を狙う企業も増えています。会社の収益を向上させる手法のひとつとして、ペーパレス化による徹底的な経費削減に乗り出してみるのもよいでしょう。
大量の書類を保管しておく必要がなくなり、保管スペースの削減も叶います。
書類保管用のキャビネットがオフィススペースを圧迫している場合や、ナンバリングをしても必要な書類を出すまでに時間がかっている場合、思い切ってペーパレス化するのもよいでしょう。書類保管のために別途倉庫をレンタルしている場合も、コスト削減と併せて取り組むことをおすすめします。
オフィス移転のタイミングでペーパレス化に乗り出せば、スペースを縮小でき、オフィス賃料の大幅削減も可能です。
ペーパレス化を進めるなかで、業務効率を根本から見直すことも可能です。
例えば、稟議書・捺印申請書・リーガルチェックなどのワークフローをシステム上で可能にすることで、紙書類を回してハンコリレーをする手間を削減できるでしょう。いつ誰がどこまで進めているかも可視化しやすくなり、業務の滞りも防ぎやすくなります。
また、データ化に合わせてパソコン上で書類を作成できるよう工夫したり、マニュアルをオンラインで配布したりすることで、更なるペーパレス化も推進できます。今ある書類の意義や目的を見直し、データ化できるものはないか、探してみるのもおすすめです。
ペーパレス化に貢献することで、企業イメージがよくなるケースもあります。環境問題に真摯に向き合う企業として社内外にアピールできれば、ステークホルダーからの信頼度も厚くなるでしょう。働き方改革への取り組みも積極的だと思われれば、今後就職・転職希望者が増えるかもしれません。
「よい商品・サービスを世の中に発信する」という本業での取り組みに加え、会社ができる社会貢献や従業員満足度向上を意識することで、企業イメージは大きく変わります。イメージアップ戦略のひとつとして取り組むことも、視野に入れてみてはいかがでしょうか。
スキャニングによるペーパレス化は多大なメリットをもたらしますが、一方でデメリットも発生します。
ここではペーパレス化のデメリットについて解説していきましょう。
大量の書類をスキャニングする場合、初期コストがかかります。複合機を一度に大量稼働させる電気代はもちろん、スキャニングに充てる人員の人件費も嵩んでしまうでしょう。外部の業者に委託する場合は、サービス利用料や委託費がかかります。
また、書類をスキャンしてデータ化しただけで満足し、根本的なペーパレス化が図れない場合にも注意が必要です。年数と共にまた紙書類が増えていくため、定期的にスキャニングコストをかけなくてはいけなくなるでしょう。
そのため、クラウドツールを導入してワークフロー体制を見直したり、社内ポータルや社内グループウェアを活用してデータでの情報共有を図ったり、社内システムそのものを見直す必要も出てきます。
セキュリティ対策のレベルが向上しているとはいえ、完全にリスクをゼロにすることは難しいものです。例え完全クローズドな環境で作業をするにしても、人為的なミスでうっかり情報を漏洩させてしまったり、USBファイルやCD-Rなどを通して情報を外部に持ち出せたりする場合のことも考えなくてはなりません。
とはいえ、紙での管理であっても、似たようなリスクは生じます。
データであればアクセス履歴を参照したり、役職・部署に応じて閲覧権限を付与したりすることもできるため、使い勝手とセキュリティ対策のバランスを考えながら管理法を検討しやすくなるでしょう。あらかじめ運用について検討しながら、ペーパレス化を進めることがポイントです。
万が一自社サーバーがダウンしたときや、データを保存しているクラウドサービスに障害がおきたとき、ほとんどの情報にアクセスできなくなる可能性があります。どの会社も万全のシステム運用をしているため確率としてはかなり少ないですが、こうしたトラブルが0%ではないことを知っておきましょう。
特に、自社サーバー上で情報を管理する場合、専任の管理担当者を置く必要があります。情報システム専門の部署がない場合や、ITに関する専門ノウハウがない会社の場合、リスクが高くなってしまうでしょう。無理に内製化しようとせず、外部の信頼できるサービスを利用することもひとつの手段です。
スキャニングしたあとのデータをどこにどう保存しておくかまで目を配り、完了後の運用についてもイメージしておくことが大切です。
最後に、スキャニングによるペーパレス化を叶える方法を紹介します。スキャニング手法はひとつではないため、参考にしてみましょう。
自社社員がスキマ時間を活用し、コツコツとスキャニングしていく方法です。人員が過剰気味な会社や、閑散期で人手が余っている会社であれば、最もコストを抑えやすい方法だと言えるでしょう。
一方で、繁忙期と重なったときに業務負荷が増したり、単純作業をすることにやりがいを見出してもらえなかったりする可能性もあります。誰をいつアテンドするか十分配慮しながら、進めていきましょう。
短期のアルバイトを雇い、ひたすらスキャニングだけをしてもらう方法です。社員より安い時給で雇えるためコスト削減しやすいほか、目の届く範囲でスキャニングしてもらえる安心感もあるでしょう。
ただし、短期とはいえ雇用の手間は生じます。求人情報誌への掲載料もかかるため、採用コストを十分見積もっておくことが肝心です。また、雇用期間があらかじめ決まっているため、その期間内に終わる業務であるか検討しておくことも大切です。
スキャニング代行サービスを活用し、外部に委託する方法です。手間と時間を最も削減できる方法であり、煩わしい作業から完全に開放されます。自社に負荷をかけずにスキャニングしたい場合に、最適な方法だと言えるでしょう。
一見するとコストが高いように感じられますが、自社社員を充てて他の業務に支障が出ることや、お金をかけて1から短期アルバイトを雇うより、安くなる場合もあります。
複数の業者を比較しながら、コストパフォーマンスに優れたサービスを探していきましょう。
スキャニングによるペーパレス化で叶えられる効果は多く、下記のようなメリットが受けられます。
・時間や場所を選ばず社内情報共有ができる
・書類の作成・管理コストを削減できる
・書類の保管スペースを削減できる
・業務効率を根本から見直せる
・企業イメージが向上する
情報漏洩やシステム障害への対策を十分におこなっておけば、コストダウンを図りながら業務効率も改善できる手法として確立するでしょう。複数のスキャニング手法を比較しながら、スキャニング代行サービスの利用も含め、検討してみることをおすすめします。