個人商店から大企業の会社まで企業の規模に関係なく、昔から営業リストや顧客リストというものは作成されてきました。昔というのは昭和時代というレベルではなく、もっと古の昔から作成されていました。少なくとも江戸時代には大福帳という形で存在していましたし、実際にはもっと昔から存在したはずです。
大昔から存在するこの営業リストはなぜ作られ、どのように活用されているのでしょうか。その歴史について紐解き、現在の営業リストや顧客リストの活用のされ方を見ていきたいと思います。
まずそもそも営業リストとは何かということについて整理しておきます。
営業リストはとは、個人商店から大企業などあらゆる企業で行われている所謂営業活動を行う上で、営業する顧客の様々な情報を記載している顧客リストのことを指します。特に法律上提出が義務付けられているものでもないため、そのフォーマット、書式は利用する人が利用しやすいように記録していて、特段定まっているわけではありませんが、一般的には以下の内容が記載されています。
上記で例示したような営業リストはなぜ作成されるのでしょうか。簡単にまとめて仕舞えば、営業部員や営業を担当する部署における最も基本的な情報共有のためというのが、今も昔も変わらず根源にある大きな理由の一つですが、もう少し詳しく目的、メリットについて考えてみます。
まず第1のメリットは、先述した通り「情報の整理と共有」です。
規模を問わず企業や会社のいわゆる商品やサービスを売り込むという意味での営業活動というのは、顧客、お客様が存在することが根本的な前提となります。その根本的な前提となる顧客の情報について整理して纏めているものが営業リストです。つまりその顧客情報がしっかりと纏まっていれば、その顧客に対する次の行動の指針となる情報があるということになり、より合理的な行動を取れる可能性を高めることができます。
また一旦情報として纏まれば、それを共有することで組織としての行動もより最適化することができます。たとえば、営業部門で営業リストとして情報共有が行えていれば、異動などによる担当の受け渡しがよりスムーズになったりすることもあるでしょうし、その時々、個々の人の忙しさの濃淡によって、手の空いている人にサポートしてもらう時の情報共有の際にも活用できます。
また、履歴情報の積み重ねなども参照できれば、訪問頻度が低くなってしまって、埋没してしまっていた潜在顧客の洗い出しを行うこともできます。どうしても売上が大きい謂わゆるお得意様への対応に比重がシフトしがちであり、埋没してしまう過去の顧客というのは出てしまうものです。定期的に営業リストを棚卸しすることで、機会損失を防ぐことができます。
第2のメリットは、「再利用可能」という点です。営業リストという形で情報として纏まっている顧客の情報は、新商品や新サービスという局面があれば、情報としてそのまま利用可能で、有力な売込み先リストになり得ます。異業種参入などになれば別ですが、一般的に新商品や新サービスは、各企業体の取扱範疇の中で開発されることが多いはずで、そういった新商品や新サービスにとって既存の営業リストの顧客は、潜在的に売上見込みの高い顧客リストとなっているはずです。
また、そのまま再利用できなくても、マーケティング活動における様々な局面で分析や行動指針の決定における重要な判断材料として利用することはできるはずです。マーケティング分析では「誰に売るのか」という視点で考えることは、非常に重要な視点の一つです。その具体的な例のリストである営業リストは、非常に有用な情報になります。
第3のメリットは、リストとして纏まっているからこその「効率的な行動」が可能な点です。
ある程度の規模で顧客リストが纏まっていれば、大規模に行いたいアプローチ行動、例えばダイレクトメールの送付や送信、コールセンターでのテレアポなどによる対個人営業などを非常に効率的に進めることができます。
例えばダイレクトメールなどを出す作業は、メール内容さえしっかりと検討しさえすれば、あとは宛名を書いて送るだけの単純作業になります。その作業に時間を取られ、重要な営業活動のウェイトが下がってしまうのは勿体ない場合があります。情報の漏洩にさえしっかり気配りできれば、情報として纏まっているので、作業をアウトソーシングして外注してしまうことも可能になります。
以上が営業リストの定義とメリットになります。営業リストは顧客の情報を一定のフォーマットに則って纏めた情報であり、企業活動、営業活動に非常に大きく資する情報です。その有用性の高さから営業リストの作成という考え方が亡くなることはないでしょう。ただ、その形は変遷するかもしれません。次は今までの営業リストの歴史を少し考えてみます。
今も昔も商品やサービスを売り買いする時に顧客が必ずいるのは、当然ながら変わりません。営業というか太古の昔から行われている「商い」と呼ばれる行為の基本的な構図です。その顧客についてきちんと管理しようと考えるのは、商売を行なっていれば、商いでは自然発生的に湧き上がる考え方でしょう。
誰がより多く買ってくれる人なのか、謂わゆるリピーターは誰なのか、最近買ってくれていない人は誰なのかという情報が分かれば、当然売り上げを上げる可能性が高まるわけですから、利に聡い商人であればまず考えることと言って良いでしょう。古今東西、一定の水準で思考できる人であれば、商いというものを抽象化してこの結論に至ることは難しくないことのはずです。
そうなってくると、あとはその方法をどのように行うかという方法論だけが課題です。ある程度の教育水準と「文字」という人類史上最も重要なツールの一つが発見されている地域であれば、紙媒体、もしくはそれに準じる媒体(紀元前であれば竹簡や皮や布)に記録しようと考えるはずです。
少し合理的に考えれば誰でも思いつくことで、もちろん書き留める紙媒体やインク、墨汁などの筆記用具の価格がある程度こなれていないと広がりのスピードに違いが出るかもしれませんが、営業リストの有用性を考えれば、商人であればコストパフォーマンスから考えても多少高価でも導入したはずです。
実際、日本だけで見ても前述した通り、紙の値段が下がった江戸時代には大福帳という形で広く日本中に存在していましたし、それより昔にも間違いなく存在したはずです。
その江戸時代の大福帳からパソコンが普及するまでの間は、フォーマットの変遷や筆記用具の発達はあるにしても、基本的に紙媒体での管理が行われてきました。その間人口は右肩上がりで増えてましたし、営業リストを作成する主体の商圏も手書きで営業リストを作成できる範囲に留まっていました。
ただ紙媒体で手書きの管理だった為、非常に大きな負担になっている側面があったでしょう。紙媒体なので、ある程度の場所もとるわけですし、検索性もスマホ時代の現代から考えると、不便この上ない状態だったと思われます。
この状態が大きく変わったのが、パソコンとインターネットの登場です。まず最初にパソコンが広く使われる様になり、様々な情報が電子化されるようになってきました。当初は非常に高価なものだったこともあり、大企業での利用が中心でしたが、パソコンで情報管理できる様になったことにより、検索性と更新のしやすさが大きく向上しました。
さらにインターネット、もっというとクラウドという考え方が広まった現代では、さらに営業リストの情報共有のあり方が全国、全世界規模とダイナミックなり、かつ更新頻度、タイミングもリアルタイム性も高まりました。簡単な話、移動や隙間時間を使って、どこからでもスマートフォンで営業作成ツールアプリを使って情報登録することも無理なく可能になっているのが現代の状況と言えます。
営業リストに限らず、情報共有のメリットはどの時代でも大きなメリットであり、無駄を省き効率的に動こうとするインセンティブはどんな時代でも強くなるものです。スマートフォンからでも簡単に情報更新できる現代の状態は、行き着くところまで行き着いた感はありますが、ただ技術革新は突然起こりますし、今後どんな形になるかは全く想像がつきませんが、まだまだ変わる可能性があるのかもしれません。
特にガラケーからスマートフォンに移行したここ10年で、情報のデジタル化は非常に加速していて、インターネットやクラウドによって営業リストはダイナミックな規模となり、情報の最新性もある程度担保できる様になってきました。そのような状態から営業リストの使われ方も変わってきている部分があります。
その一つがインサイドセールスと呼ばれる手法の広がりです。国土が広く移動時間が非常に長くなるアメリカで生まれたと言われる営業手法の一つで、オンラインコミュニケーションツールが非常に発達し、全世界どこでもリアルタイムに会話することが可能で、資料の開陳もオンラインで簡単に行える様になったことから、顧客のところに出向かずに内勤のままオンラインで顧客対応を行ったり、メールや電話など非対面のツールを用いて、内勤で営業を行う手法です。
テレアポやダイレクトメールなどによる営業がその典型的な手法です。
インターネットやクラウドの登場により営業リストでも大規模かつ広範な商圏を網羅することが可能になったことで、顧客先を訪問するフィールドセールスでは営業部員が一元的に行っていた活動も、大規模な分業して行える様にあってきました。
つまり、ターゲットの選定、リストアップ、アポイントメントの獲得から商談、契約までの一連のフローを大きく分業して、例えば、ターゲットの選定からリストアップまでをマーケティング担当、顧客とのアポイントメントの獲得から商談をインサイドセールスが担当、契約などの作業をフィールドセールスが担当する等の分業が可能になったということです。
コロナの影響も大きく、人との直接の接触を忌避する風潮が高まったことでもインサイドセールスの形式は浸透していきました。オンラインでの打合せは一昔前までは海外との時に限られていましたが、今や日常的にオンラインでの打合せがどこでも行われていると思います。
今回は、営業リストや顧客リストについて、そもそもの定義からその変遷などを外観してきました。商品やサービスを売る営業活動において、どんな形にしろ営業リストという顧客に関する情報を纏めたものの有用性は不変であり、効率的、合理的な行動をするには、絶対不可欠なものです。だからこそ規模に関係なくしっかりと営業リストの作成は行うべきでしょう。
ただ同時にしっかりとフォーマットを定め、可能な限り詳細に情報を記載し、さらには情報更新をこまめに行わないと、情報としての価値はないものでもあります。特に物事の動きや流れが非常に速くなってしまっている現代においては、情報更新のリアルタイム性をいかに保持できるかは重要なポイントとなりつつあります。
ただどうしても、様々な事情で忙しくて手が回らなかったり、一時的に一瞬にして情報登録や更新が行えないほどの顧客情報を抱えてしまう局面というのは仕事をしていれば、どうしても起こり得ます。
例えば大規模会場でのイベントやセミナーなどに参加した場合など、新規のお客様に大量に接する機会などです。そういう場合には、エクセルなどにフォーマットだけしっかりと定めて情報登録できるようにしておいて、アウトソーシングで外注してしまうのも一つの方法です。エクセルなどでデータとして整理できていれば、社内基幹システムへの登録なども行える可能性はありますし、一度エクセルのようなスプレットシートに纏まっていれば、データの加工は容易ですので、改めて別のフォーマットにすることも可能なはずです。
効率性が特に要求される昨今では、主業務である営業活動に注力するためにも外注は一考に値すると思います。