『ヤバい経済学』とは2010年に東洋経済新報社から出版された本の名前です。
翌年2011年に公開された映画のタイトルでもあるのですが、『経済学』という言葉のお堅い響きからは程遠い大変に面白い作品です。今回の記事はこの本の紹介です。
この本を書いているのは2006年には米TIME誌で「世界で最も影響力のある100人」の1人に選ばれたこともあるシカゴ大学のスティーヴン・D.レヴィット教授。本の中で教授は様々なデータについて経済学の手法を使って分析していきます。本書に挙げられている具体例を二つご紹介いたします。
保育園に遅れてくる親に罰則を設けた話。
イスラエルのとある保育園は、保護者が時間までに子供を迎えに来ないことに悩まされていたそうです。保護者が迎えに来ないために閉園時間を過ぎても保育士は残って子供の面倒を見なければならず、その分だけコストも掛かるので、経営陣は保護者の遅刻を防ぐために罰金を導入することにしたんだとか。
すると予想外の結果が出ました。罰金の導入後は何故か閉園時刻に遅れる保護者が増えてしまったのです。
この不思議な現象に対して経済学者のチームは、
“原因は保護者たちが罰金を抑止策とは受け取らなかったためだ。”
と考えました。保護者たちはそれをサービスの対価と捉えたのです。
(保育園は、通常の保育時間後も子供を保育するという追加サービスを提供しているのだ)
さらに保護者のなかには進んで追加サービスの費用を払う者も出てきてしまいました。しかもそれを互酬的で双方にとって有益な取り決めと考えたため(結局のところ保育園は追加収入を得ることになったのだから)。この罰則の規定により保護者たちは以前は頻繁に遅れることの歯止めとなっていた
罪悪感を抱かなくなったわけです。
アメリカの犯罪が90年代に大幅に減少したのは何故?
2008年、オバマ氏が当選した大統領選挙の候補者で、ルドルフ・ジュリアーニという人物がいた事を覚えていらっしゃいますでしょうか。
『割れ窓理論』という経済学の理論を応用して当時ニューヨーク市の犯罪発生率を劇的に下げた功績で有名です。90年代までアメリカ有数の犯罪多発都市だったのです。学者はこの犯罪発生率の減少は高齢化や景気の上昇が原因だと言い、反銃団体は銃規制の成果だと言いました。もちろん市長は自分の功績だと言いました。
しかし『ヤバい経済学』著者のレヴィット教授は別の原因を指摘します。
「70年代の中絶の合法化」が真の原因だと言うのです。
本書の中で様々なデータを挙げて教授は自説を補強していきます。読んでいるうちになるほど確かにそうだ、と腑に落ちてきます。しかし何故当時誰も人工中絶が原因かもしれないと気づかなかったのでしょうか?
その答えは、
原因である中絶合法化運動は、そもそも犯罪と何の関係もなく争われていたからだ。
となります。教授は様々なデータに経済学の手法を用いて
誰もが予期していなかった原因を導き出したのです。
最後に
いかがでしたでしょうか?
『ヤバい経済学』を読みたくなっていただけましたでしょうか。統計やデータというと何か難しそうで敬遠しがちですが、沢山のデータを並べてみる事でときにはとても面白い事実を発見できることがあります。
そのための地道な意識調査やアンケートで得た大量のデータの集計についてはぜひ、専門の代行業者にお任せ下さい。