記帳業務を外注してルーティン業務の負担を軽減したい企業にとって、記帳代行は頼もしい存在となります。
しかし、初めて記帳代行を活用する場合、どのようなフローで依頼するべきか分からないというケースも多いのではないでしょうか。
今回は、記帳代行のやり方をステップごとに解説します。
業者選定・契約から記帳完了に至るまでのフローを紹介するため、参考にしてみましょう。
目次
記帳代行のやり方
早速、記帳代行のやり方を解説します。大まかに分けて7つのステップに分けられるため、まずは全体像を把握していきましょう。
1.記帳に関する自社の課題をリストアップする
記帳代行をしようと焦る前に、まずは自社の課題をリストアップすることが重要です。
どんなことがネックとなって記帳業務が負担となっているのか知れば、その後の業者選定にも大いに役立つでしょう。
代表的な課題の一例として、下記が挙げられます。
- 企業規模が小さいため経理人員を雇う余裕がない
- 経理人員は在籍しているが記帳に関するノウハウがない
- ルーティン業務として記帳業務をしているがミスや抜け・漏れが多い
- 記帳などルーティン業務の割合が多くて他業務に時間が割けない
- 今の代行業者に不信感がある
- 経理部門のコストを効果的に削減したい
- 経理業務の「見える化」をしてシンプルな業務形態にしたい
上記は全て記帳にまつわる課題ですが、悩みの根本がそれぞれ異なることが分かります。
どんな課題を抱えているか次第で外注先も変わってくるため、まずはニーズを明確にしておきましょう。
2.記帳業務の外注先を決める
記帳業務を外注すると決まったら、外注先を選びます。
業者の選定に入る前に、外注先のタイプを選ぶとよいでしょう。代表的なものとして、下記が挙げられます。
- 記帳代行業者
- 税理士事務所・公認会計士事務所
- 記帳代行を手掛けるフリーランス
- オンライン経理アシスタントサービス
記帳代行は、その名の通り記帳業務の代行に特化したサービスです。
経理知識を持つ人員を多数抱えており、効率よく短時間で記帳してもらうことが可能です。
また、スポットでの依頼にも対応しているケースが多く、必要なタイミングにのみ安価な価格で依頼できることも大きなメリットだと言えるでしょう。
税理士事務所・公認会計士事務所などの士業事務所は、より確実な記帳をしてもらいやすい外注先です。
国家資格保有者の看板が出ているため、安心した依頼ができることも魅力でしょう。
税理士の独占業務である税務代理業務・税務署類の作成代行業務・税務相談業務なども一括して依頼する場合に向いていますが、一方で顧問契約が必要なためコストがかかることが難点です。
記帳代行を手掛けるフリーランスは、委託コストがピンキリであることが特徴です。
安い金額でも長期に渡って信頼関係を築けるフリーランスを見つけられれば、どの手段よりコストパフォーマンスを重視できます。
しかし相性のいい人を見つけることが難しく、選定を誤ると却ってトラブルや納期遅れにつながりやすいことがデメリットです。
オンライン経理アシスタントサービスは、記帳業務をオンライン上で外注できるサービスです。
一見すると記帳代行と似ていますが、オンライン経理アシスタントサービスは実稼働時間ベースで料金が加算されていきます。
つまり「記帳〇件」という単位ではなく「稼働〇時間」という単位で料金がかかることが多く、作業ボリュームが大きければ大きいほど料金が嵩みます。
また、完全に記帳を外注できるわけではなく、記帳のやり方など細かな指導は自社側でおこなう必要があります。
オンラインでの人材紹介サービスのような形態だとイメージし、検討していくことがポイントです。
3.相見積もりを取りながら業者を選定する
外注先が決まり次第、相見積もりを取りながら業者を選定します。
例えば記帳代行を利用する場合、複数の記帳代行業者に連絡して見積りを取ってみるとよいでしょう。
ひとつの目安として、1仕訳あたり40円を切るのであれば比較的安い業者であると判断できます。
格安業者の場合は1仕訳あたり20~40円程度で設定していることも多く、大量に依頼しても大きなコスト負担がかかりません。
しかし、データではなく紙で依頼する場合は1仕訳あたり50円~が相場です。
紙が整理整頓されておらずバラバラのままであれば、1仕訳あたり60円~になることも多いでしょう。
依頼する形態やオプションの有無によって相場が変動するため、まずは相場を知るためにも相見積もりを取ってみることをおすすめします。
4.詳細の打ち合わせ・契約締結
業者が1~2社まで絞り込めたら、詳細の打ち合わせに入ります。
依頼する形態・ボリューム感・納期・オプションの有無などを伝え、より詳しい見積りを取るとよいでしょう。
また、自社が抱えている課題や今後予定している記帳代行の利用方法を伝え、長期的なパートナーシップを築ける業者かどうか判断することも重要です。
問い合わせに対するレスポンスのよさ・セキュリティレベル・対応する経理スタッフの質なども加味しながら、問題ないと思える業者を選定しましょう。
1社に絞れたら、契約に進みます。
基本的に記帳代行業者はスポットでの依頼が多いため、メール・電話などで契約が完了することが多いです。
気になることや質問事項は契約締結前になるべく問い合わせ、疑問のない状態でスタートしましょう。
5.資料の郵送・手渡し
記帳に必要な資料を郵送もしくは手渡しします。
代表的な必要書類として、下記が挙げられます。依頼する内容によって変動するため、記帳代行業者と相談しながら抜け・漏れなく準備していきましょう。
- 法人名義の通帳コピーもしくはデータファイル
- 領収書
- 請求書
- 買掛帳・売掛帳
- 売上集計表
- 給与明細
- 法人名義のクレジットカード明細
- 売り上げや支出に関する明細
郵送にかかる費用は自社負担であることが多いです。気になる場合は事前に相談しておきましょう。
6.記帳業務
無事に資料が整い次第、記帳業務がスタートします。
ここからはほぼ丸投げできるため、後はお任せでよいでしょう。
その分空いた時間で戦略経理として新たな取り組みを考案したり、他の作業に集中したりすることができます。
作業に関する細かな要望や気づいた点があれば早急に共有し、作業のクオリティを上げていくことも重要です。
7.納品・検収
記帳業務が完了し次第、データで納品されます。
内容に問題ないか検収し、修正依頼もしくは支払いをおこないましょう。
作成されたデータは必ずバックアップを取り、決算や納税申告のタイミングで使えるよう対策しておくことが重要です。
後悔しない記帳代行業者の選定方法
ここでは、記帳代行の選定方法を紹介します。
上記でも少し触れましたが、改めて自社にとってメリットの高い記帳代行業者を探すコツを知っておきましょう。
相見積もりを取ってコストを重視する
記帳代行は自社の経理業務を軽減できる便利なサービスですが、外注にかかる金額が大きすぎると却って収益を悪化させる原因になりかねません。
そのため、基本的になるべく安い業者を探し、コスト重視で外注していくことがポイントです。
同じ記帳代行業者であっても料金プランは大きくことなるため、まずは相見積もりを取って比較・検討してみましょう。
相場もしくは相場以下の業者を優先しておけば、今後新たに記帳代行を頼みたいときにも安心できます。
依頼フローが簡略化されている業者を選んで手間を重視する
記帳はあくまでも経理業務のひとつであり、業務の全てを記帳が占めるわけではありません。
そのため、代行スタートまでの依頼フローが簡略化されている業者を選び、依頼までの手間をなるべくかけないことが重要です。
例えば、電話・メールだけで相談が完結する業者であれば、毎回オフィスに来てもらう(もしくは自社側から出向く)手間を省けます。
また、細かな指示や詳細な依頼書がなくても作業にとりかかってくれる業者であれば、最低限の確認項目だけで依頼まで結びつけることができるでしょう。
細かな打ち合わせをすることはクオリティ向上やお互いの信頼構築のために必要ですが、毎回何時間もかかるようでは業務効率を悪化させてしまいます。
使いたいときにサッと使える業者がないか調べ、活用していきましょう。
作業クオリティが高い業者を選んで質を重視する
簿記資格のある人や経理部における実務経験が長い人が多数在籍している記帳代行業者であれば、高い作業クオリティが期待できます。
ダブルチェックによるミス・抜け・漏れを見つけるシステムが整っている場合、検収も簡略化することができるでしょう。
格安の記帳代行業者の場合、日本語が曖昧な外国人を雇って記帳をさせていたり、スタッフの質を抑えて安い金額で雇用しその分を料金に反映していたりするケースも多いです。
安いからと安易に飛びつかず、クオリティ担保のためにどのような取り組みをしているか調べながら依頼先を選定することが大切です。
反対にスタッフ教育に力を入れていたり高いスキルを持つ人材しか採用していなかったりする業者であれば、安心して依頼できます。
セキュリティレベルなど安全性を重視する
記帳業務には、自社の収益状態や取引先とのやり取りに関する記録を参照する必要があります。
そのためハイレベルなセキュリティ対策が求められることを知っておきましょう。
ごく限られた管理者しかシステムの変更権限を持っていない会社や、資料持ち帰りによる自宅作業を許可していない会社であれば、安全性が高いです。
プライバシーマークを取得しているなど、安全性を客観的な指標で証明している会社も信頼できます。
反対に杜撰な資料管理をしている業者やデータを変更したときの日付・担当者・変更項目に関するログをきちんと残していない業者である場合、データの改ざんや情報の流出が容易になってしまいます。
自社の大切な資料を預けられるか判断し、依頼先を選定していきましょう。
大量発注・特急納品などフットワークの軽さを重視する
記帳代行業者のなかには、大量の記帳を受け付けてくれる業者が存在します。
決算直前にこれまで手をつけられなかった大量の記帳を依頼したり、グループ各社の分をまとめて依頼したりするシーンで、非常に心強い存在となるでしょう。
また、特急納品などに対応している場合、料金は多少嵩むことが多いですが目的のタイミングに合わせて納品してもらうことが可能です。
相談できる幅やオプションが多く、フットワークの軽い業者であればいつでもどんな相談でも受け付けてくれるでしょう。
「こんなこともできる?」と気軽な質問もしやすく、長期的なビジネスパートナーとなる可能性が高いです。
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まとめ
記帳代行は、経理業務の簡略化・効率化のカギを握る施策です。
まずは記帳代行を依頼するまでの流れを把握し、依頼先のタイプ・業者選定・細かな打ち合わせや契約などひとつずつステップを踏んでいきましょう。
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