記帳代行に依頼する?自社でやる?それぞれのメリット・デメリット

2022/08/04

記帳業務は原則して自社で雇用している人員が担当することが多いですが、近年は記帳代行などを活用して上手にアウトソーシングしている企業が増えています。

人材不足や働き方改革が叫ばれている昨今、外部に依頼できる部分は外部に依頼して、自社の負担を軽減しようとする動きが出ているのです。

今回は、記帳業務をアウトソーシングしたときと自社で実施するとき、それぞれのメリット・デメリットを解説します。

 

自社で記帳業務をするメリット・デメリット

まずは、自社で記帳業務をするメリット・デメリットを紹介します。

これまでなぜ自社で内製化している企業が多かったのか知るきっかけとして、お役立てください。

 

メリット

自社で記帳業務をする代表的なメリットとして、下記が挙げられます。

現在記帳代行を利用していない場合、下記のメリットが得られているかチェックしてみるとよいでしょう。

 
①自社に記帳ノウハウが蓄積される

自社で記帳をする場合、記帳に関するノウハウを蓄積しやすくなります。

「どうやって記帳をするべきか」「記帳をするときに気を付けるべき項目は何か」など、実務スキルが身に付きやすくなるでしょう。

新入社員など後進も育成しやすく、記帳業務が自社の手を離れてしまうことを防げます。

また、在籍している経理部社員のスキルアップにつながるためやりがいのある仕事と感じやすくなります。

スキルの育成はエンゲージメントの向上につながると考え、長い目で見て教育していくことも必要だとわかります。

 
②スピーディーかつ円滑なコミュニケーションができる

経営層や経理部長から近い距離にいる人員が記帳を担当するため、スピーディーかつ円滑なコミュニケーションができます。

細かな依頼をしたり定期的にミーティングを挟みながら進捗状況の確認ができたりするのは、自社社員ならではのメリットだと言えるでしょう。

直接の対話が難しくとも、チャット・オンラインミーティングツール・メールなどを通していつでもコミュニケーションできることも利点です。

なるべくリアルタイムで状況を把握しておきたいときや、社員ひとりひとりの適正・スキル・熱意・経験なども見ながら業務を任せていきたいときには、自社で内製化する方がよいでしょう。

 
③急ぎの記帳や修正対応に強い

自社で記帳業務をする場合、急ぎの記帳や修正対応がしやすいです。

直接担当者の席に出向いて「急ぎで申し訳ないが1時間以内に対応してほしい」と伝えることもできるでしょう。

上司からの直接的な業務指示であれば、他に進行中の仕事があっても優先順位を柔軟に変えながら対応することが可能です。

また、新入社員や未経験者が記帳を担当しているとき、ミスや誤りに気づいたとき即座に指導できます。

外注先がミスをしていても納品まで気づけないことが多く、修正に手間と時間がかかります。

フットワーク軽く動きながら都度修正していきたい場合は、自社での内製化を検討しましょう。

 
④経理部社員が自社の財務状況を可視化しやすい

経理部社員自ら記帳業務をするため、自社の財務状況をリアルタイムで可視化できます。

財務状況が悪化していそうなときは速やかに役員や上司と情報共有して経営判断に役立てたり、節税対策が不十分そうなときに新たな戦略を速やかに考えたりすることができるでしょう。

また、現場で働く社員が財務諸表・損益計算書・貸借対照表を読み解くスキルを身につけやすく、会社全体の底力も上がります。

今後経理部に「戦略経理」としての役割を求めたい場合、記帳に関する知識をつけることは必須だと言えるでしょう。

社員教育も兼ねて状況可視化のために動くことが、自社の成長につながるかもしれないのです。

 

デメリット

反対に、自社で記帳業務をすることにはデメリットも伴います。

メリットよりデメリットの方が多いと感じるときは外注を検討すべきタイミングであるため、改めて下記をチェックしてみましょう。

 
①経理部社員に負担がかかる

自社で内製化する場合、当然ながら経理部社員に負担がかかります。

記帳は月次決算にも関わる重要な業務でありながら、毎月定例で発生するルーティン業務であり、十分なスケジュールの確保が欠かせません。

ミスや抜け・漏れを防ぐためにも、無理のない業務スケジュールを立てておく必要があるでしょう。

しかし実際には、日々の忙しさに追われ緊急で記帳しなければいけないシーンも多いです。

特に繁忙期とルーティン業務が重なって経理がパンクした場合、極端な残業や休日出勤が常態化してしまうことも考えられます。

ワークライフバランスを崩しやすく社員から不満が出るほか、ストレスや過労が重なって体調不良・メンタルヘルスにつながる可能性も出てきます。

残業代や休日出勤手当の支払いによる収益悪化や、労災・労働審判など労務トラブルに見舞われることも想定し、本当に自社で記帳業務をする余裕があるか検討していくことが重要です。

 
②テレワークなど新たな働き方に対応しづらい

自社での記帳は、テレワーク・モバイルワーク・リゾートワーク・サテライトオフィス勤務など、新たな働き方に対応しづらいことがデメリットです。

自社の重要書類である請求書・領収書・クレジットカードの明細書などを外部に持ち出すことは危険であり、時に紛失・汚損・破損・盗難に遭う恐れがあります。

資料の持ち帰りがきっかけで情報が流出した場合、会社の責任は必ず問われることになるでしょう。

取引先に説明しながら再度書類を集めたり、情報流出について説明して回ったり、信頼を失うきっかけにもなります。

どうしてもテレワーク環境下で記帳業務をする場合、すべての資料はデジタル化しておくことが重要です。

原本の持ち帰りを避け、パソコンやタブレットにウイルス対策ソフトをインストールし、情報リテラシー教育をして社員ひとりひとりの意識を底上げするなど、十分な対策をしておきましょう。

テレワークで記帳業務ができないわけではありませんが、相当の準備が必要です。

 
③記帳担当者の確保にコストがかかる

記帳を担当できる社員を確保しつづけるには、採用・育成・労務コストがかかります。

月次決算をしないため定期的に記帳する必要がない場合でも、記帳の度に新しい人を採用することは現実的でないでしょう。

そのため、記帳ができる人を常に自社に在籍させておく必要があり、コストがかかります。

記帳業務をしない間、どんな仕事を任せるかまでイメージして採用することが重要です。

他の業務も問題なくこなせる人であれば雇うメリットが大きいですが、記帳だけに特化していて即戦力となりづらい人であればデメリットが大きくなります。

 

記帳代行に依頼するメリット・デメリット

記帳代行に依頼するメリット・デメリット

次に、記帳代行に依頼するメリット・デメリットを紹介します。

前述した内容と照らし合わせながら、自社にとってどちらの方がメリットが多そうか判断していきましょう。

 

メリット

同様に、まずはメリットから紹介します。

記帳代行に依頼するメリットが高いと感じられた場合は、業者の選定に進みましょう。

 
①経理に詳しい人のノウハウを借りられる

記帳代行には、簿記資格を持つ人や経理部での実務経験年数が長い人が多数在籍しています。

経理に詳しい人のノウハウを直接借りることができるため、記帳のクオリティも高いです。

1から人材を育成する余裕がない企業や、そもそも記帳業務を教えられる人員がいない企業にとっては非常に心強い存在となります。

無理に自社で内製化しようと考えず、「餅は餅屋」の感覚でプロの力を借りるのもひとつの手段だと言えるでしょう。

 
②スポットでの依頼に向いている

記帳代行の多くは、スポットでの依頼にも対応できる料金プランを掲げています。

税理士事務所や公認会計士事務所のように顧問契約を締結する必要がなく、必要なときに必要な分だけ依頼できることがメリットです。

実際に記帳代行の料金をチェックしてみると、1仕訳ごとの単価制であることが多いでしょう。

「今回は800仕訳」「次回は1,500仕訳」などニーズに合わせて依頼の幅を変えられるうえ、必要な作業にかかる金額だけが請求されるため、コストパフォーマンスにも優れています。

毎月定期的な依頼は検討していない場合や、記帳代行だけを外注して他の業務は内製化したい場合に最適です。

 
③経理部社員の人件費を削減できる

記帳代行を上手に活用すれば、経理部社員の人件費を減らせます。

例えば今現在記帳に特化した人員を雇っている場合、記帳代行に頼むことで1人分の人件費を浮かせることができるでしょう。

自社で人を雇用するメリットは多いですが、会社折半分の社会保険料・転職サイトや転職エージェントに支払う採用コスト・入社手続きや福利厚生にかかる労務コストなどを一律で削減できます。

また、繁忙期に合わせて短期のアルバイトや派遣社員を活用している場合、記帳代行に切り替えた方が安く済むかもしれません。

直接記帳の方法を指導せずとも、プロ集団である記帳代行であれば最低限の指示だけで済むことも魅力です。

経理部社員の人件費を削減しながら業務効率化も目指したい場合は、記帳代行を検討してみましょう。

 
④経理部の労務環境を見直せる

経理部における残業・休日出勤が常態化している場合、記帳を含むルーティン業務のボリュームを見直した方がよいでしょう。

働き方改革が叫ばれている昨今、誰でも無理なく幸福に働ける職場環境を用意することは、企業の責務になりつつあります。

無理な業務スケジュールを前提とした仕事はワークライフバランスを損ねるだけでなく、社員からの不満や不安を集めるきっかけとなり早期退職や勤続年数の低下につながるため注意が必要です。

記帳代行をはじめとする経理関連のアウトソーシングサービスを使い、経理部にかかる業務負荷を軽減してみてはいかがでしょうか。

余裕を持って業務に当たれるためミスも少なくなり、社員同士のコミュニケーションが活発化して風通しのよい職場になることもあります。

 

デメリット

反対に、記帳代行に依頼するデメリットを紹介します。

メリット・デメリットのどちらも知りながら効果的な手法を探っていきましょう。

 
①情報流出などセキュリティリスクがある

自社の証憑書類を渡す必要があるため、情報流出などのセキュリティリスクへの配慮は十分おこなっておきましょう。

社員による情報流出が起きたときよりも実態を把握するまでに時間がかかり、最悪の場合取引先や顧客からの指摘で発覚することもあります。

数ある記帳代行業者のなかでも、プライバシーマークを取得していたり厳しいセキュリティ環境を構築していたりする業者を選び、対策していくことが重要です。

 
②使い方を誤るとコストが嵩む

記帳代行は必要なときに必要な分のコストだけで依頼することができますが、使い方を誤るとコストが嵩んでしまうかもしれません。

例えば、いつもスケジュールに余裕がないまま特急料金を加算して依頼している場合、外注費が膨れ上がってしまいます。

また、メモや付箋がついたままの状態で依頼してオプション費用が取られたり、データではなく紙で依頼したことによる追加作業料が取られたりすることもあるでしょう。

まずは、記帳代行の料金をオプション含め細かく確認していくことが重要です。

本当に急ぎのときややむを得ないときを除きオプションを使用しないよう対策しておけば、比較的安くアウトソーシングすることが可能です。

 
③税務関連の業務は依頼できない

税務署へ提出する納税申告書類の作成・税務調査向きの陳述書類・節税に関するアドバイスなど、税務関連の業務は依頼できません。

これは記帳代行だけでなく、フリーランス・オンラインアシスタントサービス・友人・知人などであってもこうした税務関連の業務を依頼することはできないため、注意しておきましょう。

唯一の外注先となるのは、税理士です。

税理士事務所もしくは税理士を抱えていいる公認会計士事務所と顧問契約を締結し、長い目で自社の税務・会計業務に携わってもらう必要があります。

記帳代行はあくまでも記帳を依頼する業者と認識し、無理なお願いをしないよう気をつけましょう。

 

まとめ

記帳業務は、自社で雇用する社員に担当してもらうことも記帳代行などアウトソーシングサービスに担当してもらうことも可能です。

どちらにもメリット・デメリットがあるため、両社の違いを把握しながら自社に合った方法を探していくとよいでしょう。

今回の内容を参考に、どちらの方がメリットが多いか検討してみることをおすすめします。